Heat Insulation 省エネルギー_1

ネット・ゼロ・エネルギーを実現するためには、躯体外皮や設備の省エネ性能の向上が不可欠です. 計画の初期段階から建築物全体のエネルギー消費量を試算して、あらゆる省エネ技術の採否を検討することが重要です.

1. 省エネルギー基準の改正

平成25年、住宅・非住宅建築物(以下、「建築物」という)の省エネルギー基準が14年ぶりに改正・施行されました. 今回の改正では、建物全体の省エネ性能を総合的に評価する指標として、一次エネルギー消費量※基準が導入されました. 旧省エネ基準(平成11年基準)では、外壁や窓など外皮の熱性能と設備性能を一体的に評価できないため、省エネ性能が客観的に比較しにくいという問題がありました. また、住宅と建築物で省エネ性能を評価する指標や地域区分が異なる、太陽光発電など創エネに対する取り組みが評価されない、といった課題も指摘されてきました.そこで、国際的にも使われている一次エネルギー消費量を指標として、住宅・建築物ともに、建物全体の省エネ性能を、創エネを含めて総合的に評価できる基準に改められました. 今回の改正は、評価方法の見直しが中心であり、基準となる省エネレベルの引き上げは行われていません. 平成25年基準では、引き続き平成11年基準相当の外皮の熱性能と設備仕様が求められます.
住宅・建築物の省エネルギー対策では、あらゆる省エネ手法の採否を検討することが重要です(図-4, 5 ). 独立行政法人建築研究所が公開している各種評価ツール等を援用して、計画の初期段階から建物全体のエネルギー消費量を試算することが望まれます. なお、現在は、一定規模以上の建築物に対して省エネ法に基づく届出・報告が義務付けられていますが、国土交通省等は、2020年までに、すべての新築住宅・建築物に対して省エネ基準への適合を段階的に義務化する方針を示しています.


※ 建物では、電気、灯油、都市ガスなど、それぞれ異なる計量単位(kwh、リットル、MJなど)でエネルギーが使用されています. これを化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光といった一次エネルギー消費量に換算することで、建物全体の総エネルギー消費量を同じ単位(MJ、GJ)で評価できるようになります.



[省エネルギー基準改正のポイント](図-2)

1) 一次エネルギー消費量基準が導入されました.

設備の性能を個別に評価するCEC(エネルギー消費係数)は、すべての消費エネルギーを合算する一次エネルギー消費量へ変更されました. 外皮の熱性能を空調・暖冷房設備のエネルギー消費量に反映させ、太陽光発電等の創エネ効果をエネルギー削減量として差し引くことにより、建物全体の省エネルギー性能を評価する基準となりました. 従来、外皮の熱性能でのみ評価されてきた住宅についても一次エネルギー消費量基準が導入され、住宅・建築物の評価方法が一本化されました.


2) 住宅の外皮基準が外皮表面積あたりの基準に変更されました.

建物規模や形状の影響を低減するために、外皮の熱性能を評価する指標が、外皮表面積あたりの熱損失量( UA値)と日射熱取得量(ηA値)に変更されました(図-3). 地域区分は、従来のトップランナー基準に対応した8区分に改められ、建築物と共通のものとなっています. なお、地域の気候特性を踏まえて、寒冷地及び温暖地ではUA又はηAの基準値を設定しないなど基準の合理化が図られています(図-1, 表-1).


3) 建築物の外皮基準がPAL*(パルスター)に変更されました.

従来のPALの考え方を踏襲しつつ一次エネルギー消費量と計算条件を統一するために、外皮の熱性能を評価する指標がPAL*に変更されました. PAL*では地域区分や建材の物性値は、住宅・建築物で共通のものに改められました(図-1).また、室使用条件や建物用途が細分化される一方、ペリメーターゾーンの算出方法が簡略化され規模補正係数が廃止されるなど、評価方法の見直しが行われました.


2. 開口部の省エネ対策

外皮の熱性能を向上させるためには、開口部の省エネ対策が重要です.サッシやガラスで構成される開口部は、壁や屋根に比べてはるかに熱貫流率が大きいため、ペリメーターゾーンの熱負荷に大きな影響を及ぼします. 一方、自然採光や自然換気による省エネ効果とともに、何より快適で健康的な室内環境のために開口部は大切です. 熱負荷を低減させつつ可能な限り大きな開口部を設けるためには、サッシやガラスの断熱性向上と、庇やルーバー等による日射調整の工夫が重要です.

●サッシの断熱性を高めるには

断熱性能の高いサッシを使用するほか、サッシの室内側または室外側に空気層を設ける方法も有効です(表-2, 3).

  1. 断熱性の高いサッシを使用する.
    [ アルミサッシ]…最も一般的なサッシ
    [ アルミ熱遮断構造サッシ]…アルミサッシ内部の接合部に、熱を遮断するための樹脂などを挟み込んだサッシ
    [ アルミ樹脂複合サッシ]…室外側はアルミ製、室内側は樹脂製による特殊な構造で断熱性能を高めたサッシ
    [ 樹脂製サッシ]…樹脂の熱伝導率の低さを活かした、断熱性の高いサッシ
    [ 木製サッシ]…木の熱伝導率の低さを活かした断熱性の高いサッシ
  2. 空気の出入りを抑制する…サッシの高気密化を図る.
  3. サッシの室内側かまたは室外側に空気層を設ける.
    室内側…二重窓(室内窓)・カーテン・ブラインド・障子など
    室外側…二重窓(ダブルスキン)・雨戸・シャッターなど

●板ガラスの断熱性を高めるには

方位や室用途を考慮して、適切な断熱性能と遮熱性能を設定することがポイントです. その他、開口部の省エネ対策について以下の注意点があげられます.

  • 開口部の断熱性能は、大きな面積を占めるガラスの性能に大きく影響されます. 適切なガラスの設定がもっとも重要です.
  • 室内外の温度差が同じでも、風が吹いている場合は開口部から流出する熱量が増加します. 強風地域や卓越風向の開口部などでは、断熱性能の設定を上げる必要があります.
  • この構造は結露対策の面でも重要です.開口部廻りの断熱性能を向上させるために、サッシ枠の断熱材と躯体の断熱層が連続する構造とします. この構造は、結露対策の面でも重要です.

  • 表-2:断熱性の等級
図-1:省エネルギー基準の地域区分
改正後

省エネルギー基準には「新省エネルギー基準」と
「次世代省エネルギー基準」があります.

表-1:基準値の設定 図-2:性能基準計算ルート 図-3:住宅の外皮の熱性能基準
図-4:省エネルギー対策の例

太陽光発電・太陽熱利用
外皮負荷削減:エアフローウィンドウ、ルーバー、庇
内部負荷削減:昼光利用
外気負荷削減:全熱交換器、自然換気、外気冷房、夜間外気冷却、クールチューブ(地中熱利用・井水利用)
高効率照明:タスク・アンビエント照明、LED 照明、有機EL照明
高効率空調:タスク・アンビエント空調、放射冷房、VAV・VWV、大温度差送風、デシカント空調
高効率熱源:高効率ヒートポンプ、高効率ボイラ、コージェネ、高効率ポンプ
未利用エネルギーの活用:河川水利用、地中熱利用ヒートポンプ、下水熱利用
面的利用:建物間融通、清掃工場排熱利用

出典:資源エネルギー庁「ZEBの実現と展開に関する研究会報告書」平成21年11月 より作成



図-5:ゼロ・エネルギー住宅のイメージ

出典:国土交通省「平成23年度国土交通白書」より作成