Glass ガラス

開口部の省エネ対策には、適切なガラスの選択が最も重要です. 使用場所の用途や方位に応じて、熱・光学性能だけでなく、機能性、安全性を含めた総合的な判断が必要です.

1. 板ガラス製品の種類

建築に使用される板ガラス製品は、その製造法から大きく二つに分けられます.
溶融金属(スズ)の上に溶融したガラスを浮かべて製板するフロート法では、フロート板ガラスに代表される均一でゆがみの少ないガラスを製造できます.大きなサイズまで製造可能なこと、板厚の種類の多さもフロート法の特長です.また、表面に金属コーティングを施した熱線反射ガラスや、原材料の金属成分を加減した高透過ガラス、熱線吸収ガラスもこの製造法によるものです. 一方、2本の水冷ロールの間に溶融したガラスを通して製板するロールアウト法では、形板ガラスに代表される光を透過しつつ視線を遮る形模様が転写できます.金網を挿入した網入りガラスや、一般に「プロフィリット」とよばれる溝型のガラスなどもこの製造法によるものです.これらの板ガラスに二次加工を施し、性能や機能を向上させた製品も数多く存在します.
強化ガラスは、板ガラスを軟化点近く(約650~700℃)まで加熱した後、常温空気を吹き付けて急冷し、ガラス表面に圧縮応力層を形成させたものです.割れの原因となる引張り応力が打ち消されるため、耐風圧強度はフロート板ガラスの約3倍程度に向上します.複層ガラスは、2枚以上の板ガラスを、乾燥剤を封入したスペーサーによって一定間隔に保ち周囲を封着材で密封したものです.熱伝達率の小さい乾燥空気を中間層とするため、断熱性が高いガラスとなっています.また、格子やブラインドなど中間層への異種材料挿入によって複合的な機能を付加することも可能です. 合せガラスは、2枚以上の板ガラスを接着力の強い樹脂中間膜によって圧着したガラスです.中間膜の種類とガラス構成によってUVカット・防犯・防音などさまざまな機能が付加されています.また、2枚の中間膜 の間に液晶シートや高分子膜など、薄い材料を貼り合わせることで、さらに多機能なガラスが製品化されています.この他、ガラス表面へのコーティング加工(低反射ガラスや多層金属膜コートによる高性能熱線反射ガラス)、凸凹加工(サンドブラストやフロスト加工)、パターン加工(セラミックプリントやシルク印刷)など、多彩な表面加工が機能やデザインに応じて採用されています.


2. ガラスと省エネ対策

開口部の省エネ対策では、適切なガラスの選択が最も重要です.
ガラスを通した熱貫流(熱損失)だけに着目するのではなく、日射熱の取得・遮蔽を含めた熱収支と自然採光による照明エネルギー削減効果を併せて総合的に判断しなければなりません. 気候地域や建物の用途・方位から冷房・暖房負荷の条件を把握して、使用場所に応じた断熱・遮熱性能と採光性(可視光透過率)を設定することが必要です. 次世代省エネ基準が施行された1999年(平成11年)以降、わが国の複層ガラスの普及は急速に進みました. 現在、新築住宅では9割以上に複層ガラスが使用され、さらにLow-E複層ガラスの普及率も5割を超えたと推計されています( 共に面積普及率、板硝子協会調べ). ネット・ゼロ・エネルギーの実現に向けて、ガラスの熱性能・光学性能に対するより一層の理解と、一次エネルギー消費量削減という視点から適切なガラスを選択することが強く求められています.

●冷房負荷とガラスの選択
冷房負荷を低減するためには、開口部の断熱性能を十分に確保した上で、日射遮蔽性能を高める対策が必要です.ガラスは日射、すなわち太陽の放射エネルギーを全波長域にわたってよく透過させます.したがって、方位に応じて軒や庇、ルーバーといった日射遮蔽物を設置することが最も有効な対策となります. ガラスの選択では、日射熱取得率(η値) の小さいものが有効です(図-1).熱線反射ガラスや熱線吸収ガラスは、日射熱を遮蔽し、室内への熱侵入量を低減させます.注意しなければならないのは、太陽の放射エネルギーの約半分が可視光域の波長に含まれることです.明るさや眺望を損なわない快適な室内環境を得るためには、日射熱取得率と可視光透過率のバランスに配慮したガラスの選択が大切です.断熱性能が高く、近赤外域を中心に日射熱を遮蔽する日射遮蔽型のLow-E複層ガラスの採用を検討します. また、視覚的な面で使われることの多いセラミックプリントなどのパターン加工は、遮熱効果の面でも有効です.

●暖房負荷とガラスの選択
暖房負荷を低減するためには、開口部の断熱性能を高める必要があります.ガラス自体の熱伝導率はアルミの約200分の1程度と十分に小さいのですが、板ガラスが極めて薄いことと開口部に占めるガラスの面積が大きいことにより、断熱上もっとも大きな弱点となっています.ガラスの選択では、熱貫流率(U値)が小さく日射熱取得率(η値)の比較的大きなものが有効です(図-1).複層ガラスやLow-E複層ガラスでは、熱貫流を透明単板ガラスに比べて室外への熱貫流を半分以下に抑えることができます. さらに断熱性能の向上を図るには、アルゴンやクリプトン等の不活性ガスが中間層に封入された複層ガラス、ごく薄い真空層を挟んだ真空ガラス、三層複層ガラス(トリプルガラス)など、より熱貫流率の小さいガラスの採用を検討します.
近年、ガラスの熱性能向上と開口部の大型化に伴って、ガラスの総厚はますます増加しています. 現在、標準的な複層ガラスの中間層は6mmから12mmへと移行し、住宅を中心に16mm中空層の普及が始まっています(表-1). ガラスの選択にあたっては、取り付けるサッシの断熱性能とともに、ガラス厚に対応するガラス溝幅にも注意を払う必要があります.

図 -1:ガラスの種類と熱的性能

「熱貫流」は、壁体の両サイドの空気温度が異なるとき、その壁を通して高温側空気から低温側空気へ熱が流れる現象です.
「熱貫流率」は、室内空気と外気との間に1℃の温度差があるとき、1㎡の面積を1時間に流れる熱量を指しています.

表 -1:ガラスの中空層厚さと熱貫流率